FDAが
前立腺癌(
がん)ワクチンを承認
前立腺癌(
がん)の拡大を防止する治療用ワクチンProvenge (一般名:sipuleucel-T)が、米国食品医薬品局(FDA)により承認された。FDAによると、今回の承認は「身体の他の部位に転移した無症候性または最小限の症状を有する
前立腺癌で、標準的なホルモン療法に抵抗性を示す症例」に限られたものだという。
Provengeは化学療法、放射線療法およびホルモン療法のような重篤な副作用を生じることなく、進行
前立腺癌患者の生存期間を延長する効果があるとされている。米国
癌協会(ACS)のJ. Leonard Lichtenfeld博士は、このワクチンは予防や治癒を目的としたものではないと強調する一方、
前立腺癌の早期段階での使用にも可能性があると述べている。
Provengeは、患者自身の白血球から作製されるワクチン。患者から採取した細胞を薬剤で処理して患者の身体に戻すことにより免疫反応を惹起(じゃっき)させ、正常な細胞を損傷することなく
癌細胞を死滅させる。FDAによると、
2週間おきに3回静脈注射(静注)するという。このワクチンを開発したのは米Dendreo社(シアトル)。同社がホルモン療法に不応性の進行
前立腺癌患者を対象に最初の臨床試験を実施した結果、Provengeにより平均4.5カ月の生存期間の延長がみられ、患者によっては2〜3年の延長も認められた。
副作用は軽度のインフルエンザ様症状がみられるにとどまった。また、FDAによれば、別の研究では同薬の使用により脳卒中などの脳血管イベントリスクにわずかな増大が認められているという。
米マイアミ大学ミラー医学部泌尿器科教授のMark Soloway博士によると、Provengeの投与時期が課題となっており、化学療法またはホルモン療法の前に使用する方がよいかどうかは明らかにされていないという。また、患者が白血球を定期的に提供しなければならない点や、予測される費用が計7万5,000ドル(約705万円)と極めて高額な点など、いくつかの問題もある。「早期の
前立腺癌に対する有用性についてはさらに研究を重ねる必要があるが、いったん承認され、市販されれば適切なインフォームドコンセントにより早期
癌への使用も可能」と同氏は述べている。
ACSによると、米国では毎年19万2,000人を超える人が新たに
前立腺癌と診断され、2万7,360人が死亡しているという。
前立腺癌は米国男性では
皮膚癌に次いで多い
癌であるが、
前立腺癌を経験した男性のうち200万人以上が現在も生存している。死亡率は低下しており、早期発見されるようになっているとACSは述べている。
2010年4月29日 HealthDay News