ステージ3の腎臓がん克服
俳優・夏木陽介さん(74) 脳梗塞と腎臓がん、趣味と友が助けに
青春ドラマ「青春とはなんだ」の熱血教師役などで知られ、レーサーとしても活躍する俳優の夏木陽介さん。昨年、脳梗塞(こうそく)を患い、今年は腎臓がんで摘出手術を行った。経過は順調で、趣味の車や馬の話に花が咲く。病との接し方も前向きで、「好き勝手」に生きる若さを感じさせた。(文・織田淳嗣)
◇
昨年の7月(27日)、サウナ仲間とマージャンの待ち合わせをしていました。午後4時、「行こうかな」とベッドから起き上がろうとしたら、体の右半分が上がらない。4、5回繰り返したら、そのときはふっと治りました。
車を運転してサウナに行き、みんなが来てからもう1度サウナに。それからマージャンを始めて1時間半くらいたったら、手が動かなくなりました。「あれ、何だろう?」と思いました。「疲れてるんだろう」と、みんなでもう一度サウナに行こうとしたら、1人が「ちょっと待って」と救急車を呼んでくれた。検査で左側に脳梗塞が見つかりました。
マージャンを何十年もやったおかげで、マージャンの神様に助けられた。車を運転しているときだったら大惨事になったかもしれない。マージャンの約束をしないで、家で一晩過ごしていたら「もしかしたら」ということもある。
原因はまったく僕自身の問題で、水分不足です。1985(昭和60)年からパリのダカール・ラリーに参加して、僻地(へきち)に行っていたから水の怖さをすごく知っている。コーラ飲料を頼んだら現地の水で作った氷が入っていて、ひどい下痢になったことがある。それ以来、拒水状態になって、一切水を飲まなくなったんです。水分はコーヒーとお茶で取るんです。ドクターに「コーヒーやお茶でシャワーを浴びますか?」と、水を飲むよう言われました。
入院したのは1週間。3日目には、こっそり車を取りにいきました。ばれなかった(笑)。恥ずかしい話だけど、50年間、バスも電車も乗ったこともない。どこに行くのも全部車。体の一部です。退院して何日目かに、岐阜であった映画のロケに行った。病気のことはスタッフには何も言わなかった。
14、15年前から胆石の持病があって、今年3月にエコーで見てもらったら、4・8センチくらいの異物が腎臓に見つかりました。血液検査の紙をもらったら、「血液採取の目的」の所に「がんの疑い」って書いてあるんです。
最初、それを見て考えたのは同窓会のこと。みんな病気の話ばかりなんですよ。「これでみんなに仲間入りできる」ってことです(笑)。あんまりびっくりしなかったな。僕らの年齢になると、大なり小なり、いろんな病気がありますからね。周りはあんまりみんな驚かなかった。「ああそう、がん?」みたいな感じで。そう見せていたのかもしれない。僕自身も動揺していなかった。
検査で悪性だということが分かりましたが、不安はなかった。サウナにも行き、車の運転ももちろんしていました。手術は5月。目が覚めたら、記念に携帯電話のカメラで自分を撮りました。管だらけでしたが、「結構ちゃんとしてるな。これなら次の現場に行ける」と感じました。
◇
がん細胞の成長を抑えるためのインターフェロンを皮下注射してますが、熱が出て、きつい。「ステージ3のがんだからやっておいた方がよい」と言われた。セカンドオピニオンとして、昔からの友人であるドクターに聞いたら、「やんなきゃならない」と。
解熱剤の多用は腎臓に良くないと言われたので飲まない。食欲はちゃんとあるし、ちょっと我慢すれば大丈夫。
僕はね、パリ・ダカに出るまではずっとテニスをやっていたんですよ。右腕を鍛えるために、多い日は1千本くらいサービスを練習しました。それで体を強化してきた。今は鍛えていた“遺産”が残っている。そんな感じですね。いつまで持つか分からないけれど。
車やマージャンの人口が減っていると聞きますが、僕にはそこでの友達は大きなポイントですね。病気があったとき、助けになり、元気をもらっていたかもしれません。
2010年10月15日 産経新聞
青春ドラマ「青春とはなんだ」の熱血教師役などで知られ、レーサーとしても活躍する俳優の夏木陽介さん。昨年、脳梗塞(こうそく)を患い、今年は腎臓がんで摘出手術を行った。経過は順調で、趣味の車や馬の話に花が咲く。病との接し方も前向きで、「好き勝手」に生きる若さを感じさせた。(文・織田淳嗣)
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昨年の7月(27日)、サウナ仲間とマージャンの待ち合わせをしていました。午後4時、「行こうかな」とベッドから起き上がろうとしたら、体の右半分が上がらない。4、5回繰り返したら、そのときはふっと治りました。
車を運転してサウナに行き、みんなが来てからもう1度サウナに。それからマージャンを始めて1時間半くらいたったら、手が動かなくなりました。「あれ、何だろう?」と思いました。「疲れてるんだろう」と、みんなでもう一度サウナに行こうとしたら、1人が「ちょっと待って」と救急車を呼んでくれた。検査で左側に脳梗塞が見つかりました。
マージャンを何十年もやったおかげで、マージャンの神様に助けられた。車を運転しているときだったら大惨事になったかもしれない。マージャンの約束をしないで、家で一晩過ごしていたら「もしかしたら」ということもある。
原因はまったく僕自身の問題で、水分不足です。1985(昭和60)年からパリのダカール・ラリーに参加して、僻地(へきち)に行っていたから水の怖さをすごく知っている。コーラ飲料を頼んだら現地の水で作った氷が入っていて、ひどい下痢になったことがある。それ以来、拒水状態になって、一切水を飲まなくなったんです。水分はコーヒーとお茶で取るんです。ドクターに「コーヒーやお茶でシャワーを浴びますか?」と、水を飲むよう言われました。
入院したのは1週間。3日目には、こっそり車を取りにいきました。ばれなかった(笑)。恥ずかしい話だけど、50年間、バスも電車も乗ったこともない。どこに行くのも全部車。体の一部です。退院して何日目かに、岐阜であった映画のロケに行った。病気のことはスタッフには何も言わなかった。
14、15年前から胆石の持病があって、今年3月にエコーで見てもらったら、4・8センチくらいの異物が腎臓に見つかりました。血液検査の紙をもらったら、「血液採取の目的」の所に「がんの疑い」って書いてあるんです。
最初、それを見て考えたのは同窓会のこと。みんな病気の話ばかりなんですよ。「これでみんなに仲間入りできる」ってことです(笑)。あんまりびっくりしなかったな。僕らの年齢になると、大なり小なり、いろんな病気がありますからね。周りはあんまりみんな驚かなかった。「ああそう、がん?」みたいな感じで。そう見せていたのかもしれない。僕自身も動揺していなかった。
検査で悪性だということが分かりましたが、不安はなかった。サウナにも行き、車の運転ももちろんしていました。手術は5月。目が覚めたら、記念に携帯電話のカメラで自分を撮りました。管だらけでしたが、「結構ちゃんとしてるな。これなら次の現場に行ける」と感じました。
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がん細胞の成長を抑えるためのインターフェロンを皮下注射してますが、熱が出て、きつい。「ステージ3のがんだからやっておいた方がよい」と言われた。セカンドオピニオンとして、昔からの友人であるドクターに聞いたら、「やんなきゃならない」と。
解熱剤の多用は腎臓に良くないと言われたので飲まない。食欲はちゃんとあるし、ちょっと我慢すれば大丈夫。
僕はね、パリ・ダカに出るまではずっとテニスをやっていたんですよ。右腕を鍛えるために、多い日は1千本くらいサービスを練習しました。それで体を強化してきた。今は鍛えていた“遺産”が残っている。そんな感じですね。いつまで持つか分からないけれど。
車やマージャンの人口が減っていると聞きますが、僕にはそこでの友達は大きなポイントですね。病気があったとき、助けになり、元気をもらっていたかもしれません。
2010年10月15日 産経新聞
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